Interview

アルムナイ・インタビュー

企業価値と、まっすぐに向き合う。

木村 哲哉
jinjer株式会社 CFO

現場の変化を通じて、会社を「良くする」仕事へ

Tetsuya Kimura, CFO, jinjer Co., Ltd.

HR SaaSを手掛けるjinjer(ジンジャー)のCFOとして、財務経理やファイナンスだけでなく、経営企画、事業戦略、事業推進、マーケティング、インサイドセールスまでを広く見ている木村哲哉氏。実態としては、CFO兼CSOに近い役割だ。株主と連携しながらバリューアッププランを描き、その実行を推進する。M&AやPMI、今後のエグジットに向けた準備も担う。

キャリアとしてAlixPartnersを選んだ理由は「企業価値をドライブする仕事に集中したかった」と明確だ。以前に在籍していたPEファンドでは投資先企業に入り、CSO兼CFOとして経営改善を担った経験もある。その中で見えてきたのが、「企業を買う・売る仕事」と「企業を良くする仕事」の違いだった。

「自分がより好きで、得意だと感じたのは、買収や売却そのものではなく、投資先に入り、現場の変化を通じて会社を良くしていく仕事。企業価値を上げる仕事にまっすぐフォーカスできる場所を探していたとき、AlixPartnersが一番近かった。EBITDAやキャッシュフロー、オペレーションの改善など、結果に直結するテーマに向き合えると思いました」

 

企業価値を起点に、オペレーションまで真っすぐつなぐ

AlixPartnersで得たものは「バリューから逆算して、現場のタスクに落とし込む力」だと木村氏は捉えている。言うなれば、オペレーション改善を企業価値にまっすぐ結びつける力だ。

購買、BPR、人員効率、業務改善。こうした課題は多くの企業に存在している。しかし、多くの現場は目の前の業務をどう回すか、どう効率化するかに意識が向きやすい。「購買がどう企業価値に結びつくのか、人員効率がどのようにEBITDAへ効くのか、業務改善がどの数字を変えるのかまでを考え、実行できる人はそう多くありません」

AlixPartnersでは、そもそも出発点が違った。まず企業価値があり、そこから売上、EBITDA、キャッシュ、オペレーションに分解していく。価値を実現するために、どの現場の、どのタスクを、どう変えるべきか。その接続を徹底的に考えるのだ。

例えば、精密機器メーカーのサプライチェーン改革では、半導体不足の中で「いかに部品を確保し出荷につなげるか」が最優先だった。受注はあるのに部品がなく、製品をつくれない。調達といえばコスト削減を想起しがちだが、この案件で求められたのは、とにかく必要な部品を確保し、出荷につなげることだった。

部品、製品、売上影響を紐づけ、どこがボトルネックなのかを「見える化」する。毎朝、調達部門と一つひとつの部品の状況を確認し、前日のアクションを追う。必要であれば、クライアントと一緒にサプライヤーとの交渉にも臨む。木村氏にとって調達は、それまで専門的に経験してきた領域ではなかった。それでも、自ら知見を取りに行き、グローバルの専門家にも聞き、仮説を立て、実行しながら学んでいった。

Tetsuya Kimura, CFO, jinjer Co., Ltd.

企業価値のために、ハレーションを恐れず現場に踏み込む

戦略コンサルティングファームを含め複数の環境での経験を経た木村氏がAlixPartnersの独自性を強く感じたのは、PEファンド投資先のメーカーにおける全社改革だ。生産改善、プライシング、調達コスト削減、在庫削減、人員・業務効率化など、複数のテーマを同時に扱うプロジェクトだった。投資家は改善余地を見ている。一方で、会社には歴史もあり、現場の力学もある。痛みを伴う改革に対して、抵抗が生じるのは自然なことだ。

必要になるのは、クライアントに迎合することではない。むしろ担当役員や部長と向き合い、ハレーションを恐れずに踏み込む。会社を良くするために必要なことを、数字とロジック、そしてパッションをもって伝え切る。すべてが思い通りに進むわけではない。それでも、トータルで成果を出す。その経験を通じて、木村氏は「AlixPartnersのやり方が分かった」と感じたという。

現在、jinjerで木村氏が目指すのは「人事データ×AIで企業価値向上につながる「真の人的資本経営基盤」を日本企業に広げていくこと」。AI時代において、データを持つ企業の価値はさらに高まる。単なるバリューアップやエグジットを超えて、事業そのものの価値を最大化する。その先には、CFOにとどまらない経営者としての挑戦も視野にある。

自身のキャリアをひと言で表すなら「Enjoy Challenge」だと木村氏はいう。向かうべき北極星を定め、そこから逆算して一直線に歩んできたわけではない。できることを積み上げながら、常に新しい挑戦を選んできた。これからの経営の現場で、AlixPartners時代に培った「企業価値から逆算し、現場に入り、人を動かし、結果に結びつける力」は、ますます礎となるに違いない。

Tetsuya Kimura, CFO, jinjer Co., Ltd.

略歴

戦略コンサルティングファームから事業会社、スタートアップ、PEファンドまで、多様な立場で経営に携わる。2023年よりAlixPartnersでパートナーを務めた。事業推進・財務戦略・組織マネジメントを横断的に経験し、企業価値向上と経営ガバナンスの整備を両軸にした体制構築を得意とする。2025年より統合型人事システム「ジンジャー」の開発・提供をするjinjer株式会社にCFOとして参画。


撮影:桑嶋 燦