アリックスパートナーズ、グローバル自動車業界アウトルックを発表

03 July 2019

~モビリティ投資が膨らむ時期に主要市場の低迷が重なり「利益枯れ」の時代へ~

電気自動車のパワートレイン・コストは従来型自動車の2.5倍

世界の自動車市場の成長率は2026年まで年率1.6%のペースにとどまる見通し

中国市場が向こう2年で大きく冷え込み、米国市場も景気後退期に

【2019年7月2日】 グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズは、世界の自動車業界の展望についてまとめたレポート「アリックスパートナーズ・グローバル・オートモーティブ・アウトルック(AlixPartners Global Automotive Outlook)」(以下、本レポート)を発表いたしました。本レポートでは、自動車業界はCASE(ケース、「Connected:コネクティッド化」「Autonomous:自動運転化」「Shared/Service:シェア/サービス化」「Electric:電動化」)が進行する中で、特に電動化と自動運転化向け投資拡大期と、中国や米国を中心とする主要市場の低迷期とが重なるため、今後は長期にわたる「利益枯れ(profit desert)」の時代に突入するとみています。本レポートでは、世界の消費者を対象に独自実施したアンケート結果についても分析しています。

本レポートでは、自動車業界の財務業績、バッテリー開発、自動運転車、業界M&A、製品開発戦略、ディーラー、アフターマーケットについても分析しています。現在、電気自動車のパワートレイン(動力伝達装置)は従来型自動車パワートレインの2.5倍、つまり1車両当りコストにすると従来型の約6,500ドルに対し、約16,000ドルかかっています。とはいえ、時間の経過と供にコストは低下すると指摘しており、例えば、バッテリーパック・コストは技術進歩により年率4%、規模の経済によって年率7%低下するとみています。

本レポートでは、電動化向け投資は2019年から2023年までの間に2250億ドルに達するとみています。これは世界の全自動車メーカーが1年間に充てる設備投資および研究開発費の総額に匹敵する規模です。一方、電気自動車については、アリックスパートナーズが独自に実施した消費者アンケート結果にポジティブな側面が見受けられました。例えば、米国人回答者の14%が次回所有する自動車は電気自動車と回答、2025年までには20%、2030年までには33%が電気自動車を保有していると回答しました。しかしながら、電気自動車については価格の高さが懸念材料となっていることも判明しました。米国人回答者の41%が3大懸念材料の一つに価格を掲げており、昨年の29%を大きく上回りました。

世界の自動車市場の成長率は2026年までは年率1.6%のペースにとどまると予想しています。今年は中国の販売台数が248万台(2018年は270万台)まで大きく減少、米国は複数年にわたる景気後退期に入るため、今年169万台(同173万台)に減少、2021年には151万台の底に達すると予想しています。また、世界の大手自動車メーカーの金利・税引き前利益(EBIT)利益率は2017年の5.7%から昨年2018年には4.6%まで低下しています。その他の主なポイントは以下の通りです。

  • 従来型自動車メーカーおよび新規参入企業による自動運転車向け投資額は、電気自動車向け投資とは別に、今後5年間で500億ドルの追加投資が必要になると予想しています。
  • 自動車業界におけるM&Aは、案件数および総額ともに2017年からはやや減少したものの、2018年にはCASE関連案件が全体の55%を占めており(2017年は50%)、総額で210億ドルでした。
  • 電気自動車の普及が本格化することで、ディーラーでは1台ごとに得られるであろうサービス・部品収益が約1,300ドル減少し(5年間の累計)、現在獲得している保守費用の35%が消滅するとみています。

アリックスパートナーズのマネージング・ディレクター兼自動車・製造業プラクティス・グローバル共同リーダーであるマーク・ウェイクフィールドは次のようにコメントしています。「自動車業界では世界の主要市場が低迷期に入る中で新たなモビリティ時代に向けた投資が膨らむため、今後は長期にわたる「利益枯れ」の時代に入ることが明らかになりました。この苦境から抜け出せるか否かは、向こう数ヶ月で各企業が投資計画や事業運営において大胆な変革を進めることができるかによって決まるでしょう。」

アリックスパートナーズのマネージング・ディレクター兼自動車・製造業プラクティス・東京リーダーである川口幸一は次のように述べています。「日本の自動車・部品メーカーの経営者にとって今後3年間は厳しい時代となるでしょう。とりわけ、これまで売上成長を牽引してきた北米市場が低迷期に入るため、固定費の抜本的な削減を強いられることになるでしょう。また、モビリティ時代に向けた投資資金捻出が困難となるなど単独での資金力に限界がある企業については、規模の利益を実現する、あるいは成長資金を調達する手段として、M&Aを活用するケースも増えていくとみています。そうした環境下で、プライベート・エクイティ・ファンドは成長資金の提供者としても、業界再編の主導者としても、ますます重要な役割を担うことになるでしょう。」

以上

アリックスパートナーズ・グローバル・オートモーティブ・アウトルックについて

世界の自動車業界に関する公表資料および独自に実施するオンラインアンケート(18歳以上の運転免許証保持者対象)の結果などをもとに数か月に及ぶ調査・分析結果をまとめたもの。今回のアンケートは2019年5月1日から28日にかけて中華圏(回答者1108名)、ドイツ(1008名)、日本(1033名)、ノルウェー(1031名)、英国(1030名)、米国(2385名)、米カリフォルニア州(単独で実施、1019名)の国・地域を対象に実施。

アリックスパートナーズについて

1981年設立。ニューヨークに本社を構える結果重視型のグローバルコンサルティング会社。企業再生や企業が直面する緊急性が高く複雑な課題の解決に特化する。民間企業、法律事務所、投資銀行、プライベートエクイティなど多岐にわたるクライアントを持つ。世界20都市に事務所を展開。日本オフィス設立は2005年。

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