Interview
アルムナイ・インタビュー
人を動かす仕事は、AI時代の経営に残る。
中路 頼光
株式会社そごう・西武 常務執行役員兼経営企画部長
机上の戦略から、「人を動かす」現場へ

「ハンズオンで人を動かし、企業を変えるコンサルタントになりたい」。中路頼光氏がAlixPartnersへの参画を決めた背景には、そんな思いがあった。現在はそごう・西武の常務執行役員として、経営企画部長と人事部長を兼務する。外部アドバイザーとして改革に関わった企業に、今度は経営の一員として入り、成長フェーズを担っている。
中路氏のキャリアは、銀行での法人営業から始まった。その後、コンサルティング業界に移り、M&A関連のビジネス・デューデリジェンスやPMI、戦略立案などに携わる。そこで強く惹かれたのが、机上で答えを示すだけでなく、クライアントの中に入り、人を動かしていく仕事だった。
AlixPartnersを選んだ理由は、面接で出会ったシニアメンバーの存在と、再生や変革といったタフな局面で企業をハンズオンで動かす案件があること。「コンサルタントとして高みを目指すのか、事業会社のCxOを目指すのか。その分岐点になる場所として、AlixPartnersを選んだ」と振り返る。
相手に腹落ちしてもらう力を、現場で磨いた
入社前は、コンサルタントに必要なのは「地頭の良さ」や「分析力」だと考えていた。もちろん、それは欠かせない。だが、ハンズオンで成果を出すには、それだけでは足りない。人に信頼されること、相手に動いてもらうこと、腹落ちしてもらうこと。そこには、コミュニケーションを含めた「人間力」が必要だった。加えて、単純な「体力」と、メンタル面で踏ん張る「体力」も求められる。
特に実行の現場では、前向きな提案を示すだけでは済まない。ときには相手に厳しい判断を促し、痛みを伴う変化を受け入れてもらわなければならないからだ。合理的な説明だけで人は動かない。正論をぶつけるだけでは、相手は腹落ちしない。相手が置かれた状況を理解し、信頼を築き、最後に「やろう」と思ってもらう。そのための技術や姿勢を、中路氏はAlixPartnersで磨いた。
この学びは、事業会社に移ってからより強く実感するようになった。コンサルタントとしてプロジェクトに関わる際は、ファンドや経営陣の後押しを受けて動かせる場面もある。しかし社内に入れば、相手は同じ会社で働く仲間であり、日々の業務を担う当事者だ。すべての人が同じ温度感で変革を望んでいるわけではない。だからこそ、理屈だけでは人は動かない。
「相手との間に壁をつくらない。自分の中に軸を持つ。そうした姿勢がないと、人は動きません。相手に苦渋の決断をしてもらうとき、理屈だけでは腹落ちしてもらえません。そこをどう乗り越えるかが、人間力なのだと思います」

少数精鋭だからこそ、人と組織を動かし、本質に向き合う

AlixPartnersの現場が人を動かす力を養うのに役立ったと中路氏は言う。特徴は、少人数で本質に向き合うスタイルだ。中路氏が関わった案件でも、AlixPartnersのチームは決して大所帯ではなかった。人数が多ければ、当然、仕事が楽になる面はある。その一方で、やらなくてもよい分析や、必要以上に整った資料づくりに時間を使ってしまうこともあると中路氏は言う。
「少ない人数で臨むからこそ、本質的なことしかやる余裕がないのはメリットです。自分たちで全部を抱え込めないから、クライアントにも動いてもらう。その分、何をお願いするかにも無駄が許されない。結果として、本質へのこだわりが強くなる。そこにAlixPartnersらしさがあると思います」
少数精鋭を可能にするのは、集まる人材のプロフェッショナルとしての経験値の高さだ。日本だけでなくグローバルに、多様なバックグラウンドを持つ人材がいる。戦略コンサルティング出身者だけでなく、Big4、商社、事業会社など、異なる現場を経験してきた人材が集まる。単一の型にはまらない層の厚さがあるからこそ、幅広いイシューに対応できる。
AI時代でも、最後に人を動かすのは、やはり人
AI時代において、コンサルタントという職業の意味は変わりつつある。調査や分析、資料作成の一部は、確実にAIに置き換わっていく。事業会社側も、汎用的な作業まで外部に任せる必要はないと気づき始めている。だからこそ中路氏は、単に「コンサルタントである」だけでは、これからのキャリアの保証にはならないと見る。
重要なのは、自分は何を身につけ、どこで戦うのかを自分で選び取ることだ。「AIは体力が無限、知力でも人間を上回っていくかもしれませんが、人間力はない。重要な意思決定を、AIがこう言ったからそのままやります、とはならないはずです。最後に人を動かすのは、人。その力を鍛える仕事は、これからも残ると思います」
いま中路氏は、そごう・西武の成長に向け、店舗の磨き込み、商品やサービスの刷新、人材登用などに取り組んでいる。改革のコンサルタントから、成長を担う経営人材へ。その移行の土台には、AlixPartnersで培った「人を動かし、実行する力」がある。

略歴
京都大学薬学部卒業後、三菱UFJ銀行入行。業績不振企業の再生支援を含む法人営業および本社企画業務を担当。Big4系コンサルティングファームにてM&Aを通じた成長支援および投資先企業の企業価値向上支援を経て、2023年にAlixPartners入社。2025年より株式会社そごう・西武に常務執行役員/経営企画部長として参画。
撮影:桑嶋 燦